自社飲食事業|ブランディング・開業設計・運営
こたま食堂(和歌山市中島)
Overview案件概要
| クライアント | こたま食堂(弊社の自社飲食事業) |
|---|---|
| 業種 | 飲食(洋食・家庭料理)。タグライン「街の食堂」 |
| 規模 | 店内10席・テラス12席(計22席) |
| 開業 | 2017年5月・和歌山市中島 |
| 立地条件 | 線路沿いの三角形の借地。住宅街で、まちに休憩できる場所が少ないエリア |
| 体制 | 自己資金によるセルフプロデュース。ブランディングから運営まで自社で実施 |
| 提供領域 | コンセプト設計・ロゴ/VI・グラフィック・空間/内装デザイン・メニュー開発・ユニフォーム・サービス設計・SNS運用・Webサイト |
Results数字で見る
店内10席・テラス12席の小さな食堂で、のべ約11万食。
開業以来ののべ提供食数
Instagram フォロワー。県外からの来客も
2017年の開業から、地域とともに
地元紙・テレビ・雑誌・ラジオで取材が続く
※ のべ提供食数は自社レジ集計にもとづく概数です。
Story取り組み
Before背景 — 「グリルたまちゃん」から始まる
始まりは、代表・大硲の家族の物語です。父・玉夫は、ホテルレストランの総料理長に師事した洋食の職人でした。和歌山弁で「たまちゃん」と呼ばれた父の店「グリルたまちゃん」を、母とふたり、20年あまり営んできました。学校から帰るとカウンターに座り、腹が減れば食べ、店に来るお客さんと話す——大硲はそんな店の風景の中で育ちました。父が51歳で他界し、店は閉じました。
それから年月が経ち、独立してデザインの仕事をしていた大硲は、母と「もう一度、食の場をつくろう」と話し始めます。物件を探すなかで出会ったのが、アトリエグリッド一級建築士事務所の岩西所長。彼の祖母であり土地のオーナーである堀端氏には、「地域の役に立つ形で使ってほしい」という思いがありました。ただしその土地は、線路沿いの三角形。条件としては、決して使いやすい場所ではありませんでした。
Issue設計課題 — そのままでは、再現できない
「父の店をもう一度」と言っても、単純な復刻はできません。開業を設計する上での課題は、はっきりしていました。
- 父の洋食は職人の技術で成り立っていた。父のいない今、同じメニューは再現できない
- 母の料理は、長年つくり続けてきた家庭料理。今風の小洒落た調理や盛り付けはできない
- 土地は線路沿いの三角形。住宅街で、人通りはあるのに、まちに休憩できる場所が少ない
私たちはこの条件を、隠すのではなく、そのまま価値に変える方向で設計しました。技術の店ではなく、「母の味でつくる洋食」の店。映える店ではなく、毎日でも通える店。使いにくい三角形の土地は、建物を小さくして、残りを芝生の庭にする。
Process 1コンセプト — 3つの言葉に落とす
この設計を、3つのコンセプトに言語化しました。こたま食堂のすべての判断は、いまもこの3つに立ち返ります。
Mom to KIDS
母の味を子どもたちへ。日常的に通った子どもが、10年後、20年後に「また行きたい」と思い出す場所に
LOCAL First
地元食材を優先し、生産者との距離の近さを価値にする
COMMONS for the town
食事の場であると同時に、地域の人が自然に集まる「まちの共有地」。芝生の庭がその象徴
Process 2かたち — ロゴから建物、犬連れテラスまで
ロゴは、父がかぶっていたコック帽と髭がモチーフです。かっちりしたエンブレムではなく、子どもの落書きのような線で描きました。「街の食堂」というタグラインとあわせて、構えない店であることが一目で伝わるように。建物は三角屋根の白い平屋。前面には芝生の庭を広げ、テラス席は犬連れOKにしました。
この犬連れテラスは、狙って当てたものではありません。「まちの共有地」というコンセプトに沿って庭を開き、犬連れを受け入れる——それだけのことでしたが、思いがけないところから反響が生まれました。当時、犬と一緒に入れる店はドッグカフェ的な小洒落た料理の店が中心で、野菜もたっぷり食べられる、万人向けの家庭料理と洋食を犬連れで楽しめる店はほとんどなかったのです。その空白が口コミになり、遠方から犬連れで訪れるお客さんが増えていきました。
コンセプトからロゴ、建物、メニュー構成、ユニフォーム、Web、SNSの投稿まで。ひとつの思想から出発して、すべてを一貫させる。私たちが普段クライアントに提供している仕事を、自分たちの店で最初から最後までやり切りました。
Process 3運用 — 毎日の投稿と、「こたまらしいか」という基準
開業当初、SNSを見てくれる人は数十人でした。そこから、日替わりランチの写真を毎日投稿し続けました。派手なキャンペーンではなく、今日のご飯を今日撮って出す。その積み重ねをInstagram経由で地元紙が大きく取り上げ、テレビ・雑誌・ラジオへと取材が連鎖し、フォロワーは3,000人を超えました。
運用の基準はシンプルです。「それは、こたまらしいか」。いまでは接客のスタイルもSNSの投稿も、スタッフ自身がこの基準で判断し、工夫しています。ブランドを設計者が抱え込まず、現場が使える判断基準として手渡すこと。これも設計の一部です。
小さな実験も重ねてきました。お付き合いのある食品小売業者の佃煮を日替わりランチに添え、小さなポップで作り手の物語を紹介したところ、食べた方が実際に買いに行くようになり、かけた費用の約3倍の売上の波及が生まれました。10席の食堂は、地域の商品の「試せるメディア」にもなれる——そんな手応えを得た取り組みです。
Afterその後 — 3つ目のコンセプトが、いちばん強くなった
9年経ったいま、こたま食堂の風景をつくっているのは、芝生で遊ぶ子どもたち、テラスの犬連れ、庭を目当てに市外や県外から来る人たちです。開業時に3つ目に掲げた「COMMONS for the town——まちの共有地」が、結果としていちばん強く育ちました。
この9年は、「自分たちの想いを、ことばとデザインで価値に変えていく」という弊社の仕事を、自分たち自身の店で確かめてきた時間です。ブランドは一発の施策ではなく、日々の積み上げの仕組みであること。素朴さや手作り感のような「守るもの」を決めておくと、日々の判断がぶれないこと。ここで確かめたことが、クライアントワークの土台になっています。
Deliverables展開物
Scope手がけたもの
- コンセプト設計
- ロゴ/VI
- グラフィック
- 空間/内装デザイン
- メニュー開発
- ユニフォーム
- サービス設計
- SNS運用
- Webサイト